ビター・オア・ミルキー



「だったらちゃんと、本腰入れて勉強しろよ。部活に顔出してる場合じゃないからな」

「はい」


…地元を離れるとか、母さんに憧れて医療従事者になりたい、薬剤師になりたいと思っていたこととか、そういうのは、君花は知らない。

ずっと、言えなかった。

そんなすごいことを言って、実現できなかったら恥ずかしいと思っていたから。



「…ダサ」



進路指導室のドアを閉めて、思わずため息が出た。


…口に出してこなかったのも、君花にカッコ悪いところを見せたくなかったから。


本当に、何から何までが、君花のことばかりだな。


…でも、それももう、どーでもよくなっている。

今更、かっこつけたって、俺は最低なことをしたのだから。


君花に、嫌われることしかしていないのだから。




夕日が差し込む教室。
思わず、自分の教室に立ち寄る。


…誰もいない。テスト期間終わったし、もうみんな帰ってるか。


「…君花…」


お前はもう、家にたどり着いてるかな。


何も連絡がこない携帯が、寂しく見えた。

いつもは、何かあるとメッセージを送って来るくせに。


…当たり前か。あんなことしたんだから。