ビター・オア・ミルキー



「ん、また、電話しとく」

「ほんと?きっと喜ぶよ」


…君花と同じくらい、心の拠り所にしていた人だ。

逃げた日には、君花が泣きながら探してくれてたっけ。


「…うまい」


君花、今頃何してんのかな。
あの痕、あいつに見つかっただろうか。
そのせいで、喧嘩してないだろうか。

…泣かせてないだろうか。


大好きな里芋の煮物は、昔から食べ慣れた味で、美味しくて、でも君花のことを思い出す味でもあって、今の俺が食べるには申し訳ないと思うほどだった。




「…朔太朗さ、」

目の前に、ダンッと煮卵を置いた母さんは、なぜかニヤニヤ笑っていた。


「…なんだよ。知る飛び散る」

「あんた、君花ちゃんと喧嘩でもしたわけ?」

「…は?」


何を聞かれるのかと思いきや、そんなこと。

でも、眉をひそめて答えた俺に、母さんは、「図星かな」と言って笑った。


「だいたいアンタが不機嫌な時は、君花ちゃんが絡んでるのよ。何、ついに嫌われちゃった?朔ちゃんキラーイ!って」

「…ちげーよ…」


なんだそのモノマネ。似てねぇし。


「そんな汚い口聞いてるアンタが、君花ちゃんの前では妹を可愛がる兄のようになるんだからね、おっかしーったらありゃしない」


くっ…。

久しぶりにこの時間に帰ってきたと思ったら、何を言ってるんだこの人は。

つーか、なんで分かるんだよ。ほんと母親ってのは怖いな!


「でもね、朔太朗」

「…」

「あんたは、もっとワガママになっていーよ」

「…」


昔から、無理してんの隠すのだけは上手いんだから。

…食器を水で洗い流しながら、母さんは言った。


…母さんは、きっと俺が体調なんか悪くないことを見抜いてる。

君花と何かあって、テストにも行かず部屋にこもっていることも分かってるんだ。

…そしてきっと、昔から俺の気持ちにも、気づいてる。