「俺の前で、そんな反応しないで」
「飛呂くんのこと考えるなら、帰って」
…なに言ってんだ、俺が聞いたんだろ。
そう、思って自分を殴りたくなる自分と、相変わらず顔を赤らめたままの君花が目に入って、泣きたくなる自分と。
2人の自分が、何度も闘って。
「…ほんと、生殺しだよね、毎回毎回」
最後は、泣きたくなるくらい、嫉妬に駆られた自分が勝ってしまった。
「…っん…!」
瞬間で身体が強張るのを、俺はすぐに気づいた。
きっと、俺は今、彼女に傷をつけた。
…でも、情けないことに、こんなになっても、俺の嫉妬はおさまってくれなくて、強引に口を開かせては、怒りに満ちていた自分の熱を押し込んだ。
「…んっ、ふ」
口の端から、与えた熱が溢れるのに気づく。
段々と、力を失くしていくのに気づく。
わかってた。わかっていたんだ。俺は。
「っう、朔ちゃ…んっ」
聞きたかった声。甘い。
どんな状況であろうと、甘い。俺にとっては。
…でも、欲しいのは、こんな声じゃなかった。
…それに気づいたのは、首筋に吸い付いた瞬間、彼女の肩がビクッと跳ね上がった時だった。



