ビター・オア・ミルキー



「幼馴染だからって、余裕ぶっこいてると、他の人に持ってかれちゃうよ?」


…ばかか。

余裕なわけがない。むしろ焦っている。


幼馴染だから1番近い存在だとみんなは勘違いしている。

むしろ、1番遠いのに。

彼女にとって俺は、“朔ちゃん”でしかない。
男として、見てもらえるような、人間じゃなくなっているというのに。

これからどうやって、今更、どうやって、君花の意識を“朔ちゃん”から遠のければいいんだよ。



「加野くん、うまいんだからさあ。こういうの、君花ちゃんにも教えてあげるとイチコロだよ?きっと♡」

「…ふざけんなよ」


そんなこと、できるか。

そんなことをして、好きになってもらっても全然うれしくない。

それは、男としてこころが繋がったわけじゃない。

繋がるのは、身体だけだ。


だから、絶対に、君花にだけは絶対に、そんなことはしない。
断じてしない。

…そう、思っていた。

気持ちが通じるまで待とうと。
君花のことを、こころから気持ちよく、抱けるようになるまで待とうと。

…そう、思っていたんだ。

けど、そう思っていた自分が、今では言葉にできないくらい気持ち悪い。