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潮田君花と出会ったのはいつだろう。
俺はきっとその運命の日、まだ自分が何者なのかも分からないくらい小さくて、自分でも歩けない、人間として不完全な状態だった。
それから数年たって、やっと、潮田君花の存在というものを認識した。
「さくちゃん、きみかね、」
そうやって話す女の子。
俺の後ろを付いてくる女の子。
それは物心ついた時からずっと続いてきた。
…じゃあ、それが変わったと気づいたのはいつからだろう。
「朔ちゃん、朔ちゃん」
彼女の笑顔に、支えられてると自覚したのはいつだろう。
…それも、遠い昔のことだ。というか、はじまりもあったのかさえ疑わしい。
俺にとって、君花は、君花という人間でしかない。
それはまるで花のようで、宝物のようで、そしてたまに、ひどく壊したくなるものだった。
近くにあったおもちゃのように、紙のように、時々、ひどく傷つけたくなった。
いつも後ろを付いてくる君花。
とてもかわいい。大切にしたい。
だけど、それを嫌だと感じたのは、いつからだっただろうか。
「朔ちゃん、わたしね、彼氏ができた…!」
…あの時か?
いや、ちがう。あの時はもう、そんな感情は当たり前のように抱いていた。
ただ、その時は、傷つけたいと思わなかった。
あいつに好きな人という、特別な存在ができたというのに、なんとも思わなかった。
ある日、初めてのキスをしたと報告してきた。
…あの時か?
いや、それもちがう。その時も俺は、特別なんとも思わなかった気がする。
じゃあ、なんでだ。
君花のことは、誰にも触れさせたくない宝物のようだと、今まで感じてきていたのに。