ビター・オア・ミルキー



「わたしは、朔ちゃんのこと…、どういう好きかなんて、分かんない…。でも、分かってることは…ひとつだけ、分かって…る、ことは…」


泣いたらだめ。

泣かないって決めてたんだ、わたしは。

ここでないたら、ずるいんだよ。
だから、泣くわけにはいかなかったのに。

なのに…。


「…ひとつだけ、分かってるのは…」


ぼたぼた…と、情けなく、涙はこぼれていく。

これは、朔ちゃんへの想い?
自分の、情けなさへの思い…?

ううん、違う。


「…ひとつだけ分かってるのは…。わたしは…わたしが、触れられたいって思うのは…」

「…」

「…飛呂くん、だけなの…」



朔ちゃんの想いの形は、もう、分からないほど大きくなっていた。

それは、生まれた時から一緒にいる。それだけが理由。

ずっと一緒にいたから、形を思い浮かべることなんてできない。

どんな形かなんて、分からないの。


でも、何度も人と出会って、朔ちゃん以外の人と出会って、何度も失敗して、それでも、また好きになった。

…それは、まぎれもなく、飛呂くんだった。