ビター・オア・ミルキー



時計の針ばかり動いて、もうダメだと思っていた時。


「っあーーーーーー…」

「…!」


隣に座っていた飛呂くんは、頭をガシガシと掻きながら、持っていた飲み物をダンッと叩きつけた。


…ものすごく、怒ってる。


「…っ、ごめんなさい…」


たまらなくなって、謝る。

そのわたしの声に、ぴくっと小さく肩を揺らしたけど、その後すぐに、はぁ…と小さく溜息をついた。


「…あのさ」

「…」


飛呂くんの低い声が、響く。



「きみかは…その、朔ちゃんって人が、なんでそんなことしたのか、聞いたわけ」

「え…」


朔ちゃんが…どうして、わたしにあんなことをしたのか…。


「…聞いて、ない。けど、その前に、わたしのことむかつくって…腹立つって言ったから、たぶんそういう…」

「…イラっとしたから、したと?」

「……うん………」


それ以外、朔ちゃんの言葉からは、なにも予想できなかった。

わたしが鈍感で、朔ちゃんがイライラしてることに気づけなくて…

だから、それを分からせるために…


「…」


…ん?

でも、待って。



「…あのな、ヒヨコ」


ぐるぐると思考を巡らせていると、飛呂くんの声がそれを遮った。

綺麗な黒い澄んだ目が、わたしの方をじっと見ている。

その目は、わたしを捉えて、逃さなかった。


「…お前、あの人がずっとお前のことどう思ってたか、聞いたことある?」


「…え…?」


…朔ちゃんが、わたしをどう思ってたか。