ビター・オア・ミルキー





「──…それ、忘れてた」

「えっ?」



飛呂くんの、指がさす方。

それを辿っていくと、わたしにさっき貸してくれたカーデ。


「……!あっ……!」


すっかり、返すの忘れてた!

わたし、ぎゅって抱きしめてて、恥ずかしい。

そうだよね、寒いもんね。
ちゃんと着なきゃ、飛呂くんが風邪ひいちゃうよ。




「ごめんね飛呂くん!わたし、なに自分のモノみたいに…………………」


「─────っ」







────夜空が


      ぐらりと動いた────







「………………………えっ…?」




それは、あまりにも突然で、さっきと同じように、周りを見渡してみるけれど。


でも、辺りは静か。

鈴虫が鳴き始めてる。



「……………………飛呂くん…?」




───じゃあ、どうして、わたしは今抱き寄せられてるの……?