「…じゃ、じゃあ飛呂くん、わたしはこれで……」
「…あぁ」
「……飛呂くんがそこの角曲がるまで見てるから、帰っていーよ」
「はっ?」
…だって、ずっと見てたいよ。
飛呂くんの、大きな背中。
今日、わたしが独り占めした、大きな背中。
最後くらい、いいでしょう?
「いーから、飛呂くんが先に帰って。じゃないとわたしも家に入らない」
「………;」
こんなこと、思った人も初めてだよ。
「……はぁ。分かったから。その代わりすぐ家入れよ」
「うんっ!」
「─…じゃーな」
くるりと回る体。
向けられた背中。
「……またね」
──…飛呂くん。
飛呂くん、すきだよ。
気づいたらもう、とてもとても大きくて。
怖いのに、実は優しいところも。
なんだかんだ、わたしのことを考えてくれてるところも。
読書好きなところも、目が綺麗なところも。
めんどくさがり屋なところも。
全部、全部すきだよ。
「飛呂くん…………」
飛呂くんのこと考えたら、涙が出ちゃうくらい、大好きだよ。
今日は、とても幸せだったんだよ。



