ビター・オア・ミルキー



「ごめん…、あんまり図々しいね。そろそろ家に………」

「………」



───そう、言って。

鞄を握り替えした時だった。


「──…っ?!」


腰に、飛呂くんの右手が回って。

グッ…と、当然に、唐突に、飛呂くんとの距離が縮まったのは。


「ひっ……飛呂くん……?!」



…さっきの、カーデと同じ匂い。

顔は見えない。だけど、本当に近くて。


「飛呂くっ…」

「バカ。車来てる。ちゃんと見ろ」

「…へっ……」



飛呂くんの低い声で冷静になって周りをみると、黒い普通車がライトを照らしながら走り去って行った。


「…あっ、ごっ、ごめん…びっくりして…」

「…変態扱いすんなよ」

「ごっ、ごめん…」


なんだ…そういうことだったのか…

びっくりした…いきなり抱き寄せられたりしたから……。