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帰り道は、静かだった。
飛呂くんの口数もさっきより減ったし、わたしも今になってさっきの言葉の大きさに気づいて恥ずかしいし。
暗い夜道を、ふたりでトボトボと歩いた。
…何も言わないけど、わたしの家の方に来てくれてるから、送ってくれてるつもりなんだろうな。
離れるの、ちょっと寂しいや。
「…っ、クシッ」
「……」
肌寒い。もうすぐ夏がくるというのに、夜はやっぱり冷え込んでる。
夏…か。
飛呂くんと会って、一つ目の季節が過ぎようとしてるんだ。
満天に輝く星を見ながら歩く。
どっしりと構えたような大三角形。
白鳥座を指で辿ろうとしたとき、目の前が一気に真っ暗になった。
「へぶっ……;」
バサッとした感覚があって、顔に何かが乗ってる。
わたしとは違う、良い匂いに包まれて。
「……これ…………」
「いーから着てろ。風邪ひく」
「……」
これ……、飛呂くんの、カーデだ…。
すごく大きい。何サイズなんだろう。
「あっ、ありがとう!あのっ…、あったかいよ!!」
「…あ、そ」
上着…恥ずかしいからいいよって断ったら、きっと飛呂くんは怒るんだろう。
「いいから着とけ」って。きっと。
それにしても、良い匂い。
飛呂くんの匂いに落ち着いてるなんて言ったら、取り返されるのかもしれないけど。



