「…ヒヨコ」
わたしがすべての教科書をかばんに詰めて、チャックに手をかけたとき。
「……!」
低い声が、背後で聞こえた。
小さいチャックを握る手が、ふるふるっと身震いをして。
その小さな震えが、心臓にも広がっていく。
「…っ、飛呂くん…」
鞄を肩にかけて、カーデを脱いで腕にかけた飛呂くんは、いつのまにかわたしの目の前にいた。
「準備終わったんなら早く行くぞ」
「…あっ、う、うん!」
今日は、スポーツバッグじゃない。
部活、お休みなのかな。
「ほら、鞄貸せ。とっとと来ねぇと置いてくぞ、グズ」
「ちょっ…ちょっと待ってよぉ…!」
わたしの鞄を奪って持って行く飛呂くん。
わたしは慌てて机にいすをしまって、飛呂くんの背中を追いかけた。
「……っ」
一緒に出て行く教室。
友達の目線。
熱い、空気。
…わたし、これからほんとに、飛呂くんと二人で出かけるんだ。



