「…君花ー」
「ん? 」
「君花にひとつ、お願いがあるんだけど」
「…なーに?」
朔ちゃんからのお願いなんて、珍しい。
「…寄りかかっていーですか」
「え?」
寄りかかる?わたしに?
「うん、いいよ?おいで」
「んー」
…朔ちゃんは、何か精神的疲れとか、悩みがあると、わたしにこうやって甘えてくる。
家でも1人、お父さんもいなくて。
そして、辛い恋もあって。
まるで、他の女の子では埋められない小さな小さな穴を、こうやって埋めていくように。
…でも、これは小さい頃からずっとだ。
初めて、お父さんとの別離が決まったときは
こうやってわたしの胸でひそかに泣いていた。
「…君花、俺、これから君花のことたくさん困らせるかもしれない」
「…恋のことで?」
「………そー」
「大丈夫だよ、そんなの」
優しい、優しいミルク王子の、
あまり見ないコドモなところ。
どこか不安定な朔ちゃんの髪は
とても、優しい匂いがした。