ビター・オア・ミルキー



「…っ、いや、なんでもない」

「え…?」



何かを言い掛けて、朔ちゃんは離れた。

だらりと垂れ下がったわたしの左手。



「…ごめん。立ちくらみ、しただけだから」

「───…」



立ちくらみ?
明らかに、今何か言い掛けたのに…。

どうしたの、朔ちゃん…─



「…君花、あのね」

「はっ、はい」

「…君花の今の気持ちはね、俺は恋だと思うんだよね」

「…えっ」



こっ、こここ、恋?!

…いやいや、わたしだって今まで何回か好きになったことはあるし、彼氏だっていたし。

恋の感覚くらいは、知ってるつもりだよ。


でも、でも何かが違うよ。



「朔ちゃん、わたしの恋は楽しいんだよ。今までこんなに苦しくなったことなんかないもん。だから違うって思うの」



みんなは苦しくなる、とか言うけれど。

わたしは、いつも恋を楽しんでいた。
そりゃあ、別れは悲しかったけど。



「…君花、君花はまだ、コドモだね」

「…え?」



だから、違うんじゃないの……─?