「今日の理真さん、可愛すぎるよ。…やけに素直だね。」
「…デート、ぶち壊しちゃったもん。」
「ぶち壊されたなんて、俺、思ってないよ。むしろ…。」

 凛玖の影が伸びた。唇に軽く甘い余韻だけが残る。

「凛…玖くんっ…!風邪、うつるっ…!」
「理真さんの熱がうつって、俺も微熱くらいはあるかも。」
「え?」
「理真さんが可愛すぎて、顔が火照る。微熱かな。」

 そう言って甘くて優しい笑みを浮かべる凛玖に、ぐちゃぐちゃだった気持ちが少しずつなくなっていく。

「凛玖くん…。」
「なに?」
「凛玖くんの笑顔が好き。」
「えっ?な、ど、どうしたの?」
「凛玖くんの声が好き。」
「理真さん?」
「凛玖くんの優しさが、好き。」
「ちょ、ちょっと!待って待って!」
「…凛玖くんの目が好き。」
「理真さんっ!」
「…嫌、だった…?」
「…逆。我慢できなくなるからそこまでにして。」

 一度顔を伏せた凛玖が顔をゆっくり上げた。凛玖の表情にこんなに余裕がないのを理真は初めて見た。