キミが泣くまで、そばにいる


「ほう、おへほふほはひ」

「ごめん何言ってるか全然わかんない……」

「おいアカツキ、こいつ誰?」
 
左サイドから顔を近づけてくるのは、金色の髪がまぶしい超絶美形な男子だ。

微笑み王子と同じくらい目立つ髪色の彼は、1学年の廊下で何度か見かけたことがあった。

名前は確か――星みたいな、彗星みたいな……。

「ああ、紹介する」
 
右側から伸びてきた手が、ふいに私の頭をポンとたたいて心臓が跳ねあがった。

スプーンを右手に持ち直した井端暁が、カレーの匂いを漂わせながら得意げに金髪男を見る。

「クラスメイトの真辺知紗。今日から俺の小間使いになってもらおうと思って」

「えっ!?」

「ふーん。“ちィ”か」

「いや、チイじゃなくてチサ……ていうか井端くん、小間使いって何!?」

「え、小間使い知らない? 世話係のこと。まあ下僕みたいな? 奴隷……とはちょっと違うか」
 
ニッコリ笑いながら言われて、ぞぞぞっと背筋が粟立った。

奴隷って……!