「そのまま持っていったらヘンゼルとグレーテルになっちゃうよ。はいこれ」
なるほど、このまま歩いたら、パンくずを山道に撒いた童話の主人公みたいに、点々と廊下にプレゼントのあとを残してたかもしれない。
袋をありがたく受け取り、腕の中の荷物をしまう。
「ありがとレミ。ちょっと行ってくるね」
セイのところにでも行ったのか教室にアカツキの姿はない。
ひとまず、ダイチくんとトワくんのいる8組を目指そうと、廊下に出た。
「お、チーコ」
「あ、トワくん! ダイチくんに高槻くんも!」
6組の前で、タイミングよく立ち話をしている3人に出くわした。
生徒が行き交う廊下で、彼らはやっぱりほかの男子と比べて圧倒的なオーラを放っている。
廊下の隅や教室内からちらちら目線を寄越す女子の多いこと多いこと。
やっぱりモテるんだなぁ。
改めて思いながら私は彼らを見上げた。
「ちょうどよかった。3人にそれぞれお届け物です」
宛名を確認しながら贈り物の小箱やお菓子を手渡していくと、ダイチくんが垂れ気味の目を優しく崩した。


