一度も振り返らない背中は、気を抜くとどんどん先に進んでしまう。
わたしは教室で食べられなかったお弁当をぶら下げながら、必死にあとを追った。
井端暁に「昼メシも一緒に持ってきて」と言われたけど、まさかこのお弁当をよこせって意味じゃないよね……?
そして重い足を懸命に進めた結果、
私はなぜか中庭のベンチで自分のお弁当を広げていた。
やたらとカッコイイ男子5人に、周囲を固められながら。
「えっと……この状況はいったい……?」
昨日の強風とは打って変わってやわらかな風がそよいでいる。
天気もいいし、たまには外でお昼を食べるのもいいかもしれない。なんて言ってる場合じゃない。
両側に2人。向き合った正面のベンチに3人。
5人の男子は全員1年生らしく、アイドルグループみたいなオーラを発している。
「あのう……井端くん、これは……」
私の右サイドに座った微笑み王子は、コンビニの袋からカレー弁当を取り出すと、スプーンをくわえたままこちらを向く。


