キミが泣くまで、そばにいる



 誰かとやりとりしてるのかゲームでもしてるのか。私が来たことにも気づいてないらしいし、とにかくこの金髪美形はマイペースだ。

 ちらっと視線を向けると、通路を挟んだとなりの席で高槻くんが頬杖をついて考え事をしている。こちらも自分の世界に旅立ち中だ。

 あ、そうかと気づいた。

 この3人の中で唯一私を視界に留めてくれるのがトワくんなのだ。
 会話が自然に成り立つ。だから話しやすい。

 そんなの、当然のことなのにな。

 人と話をするときは相手の目を見る。相手の言葉に対して言葉を返す。会話のキャッチボールの基本だ。

 それが、個性的な人間が集まるこのアイドルグループのなかではあまり通用しない。

 私がいる状況は、やっぱり普通じゃないんだと、改めて思った。

 こんなイケメンたちに囲まれて、ありがたいんだか、迷惑なんだか……。

「うっわアカツキ、またカレーかよ」

 トワくんの声に顔を上げると、トレーを持ったアカツキが目に入る。

「ハンバーガーでカレー味とか、邪道だろー」

「うまいんだってコレが。トワも一回食べてみなよ」