キミが泣くまで、そばにいる



「先生との関係、やめたほうがいい」

 静かな口調だった。

 いつものふわふわした笑みも、皮肉っぽい表情も、馬鹿にした様子もない。

 さっきまでの意地悪な空気が薄れて、戸惑う。

「な……なんでそんなこと、言うの……」

「やめておいたほうが、知紗のためだから」

 まっすぐ見下ろされ、唇が震えた。

「先生と生徒だから、ダメってこと?」

 ふいに胸の底に湧いたのは、怒りだ。
 小さな火が、ゆらゆらと赤く燃えて、握り締めた手が勝手に震えた。

「私と先生のこと、何も知らないくせに、勝手なこと言わないで」

「知らないけど、知ってることもある」

 アカツキは小さな子供に言い聞かせるように、ゆっくりと続ける。

「ふたりの関係がどんなであれ、知紗は佐久センのことが好きなんでしょ? 本気で」

 見えない手にぐっと喉をつかまれたような気がした。