キミが泣くまで、そばにいる



「知紗、いつから付き合ってんの? 佐久センと」

 いきなり核心をついてきた彼は、いたずらっぽい目で私を見下ろす。

 優しげなのに、話題を逸らすことを許さないような、強い視線だった。

 心臓がばくばく鳴って、息がうまく吸えない。

「アカツキには、関係ない……」

「高校入ってまだ一ヶ月ちょっとだし、そんな短期間で一教師と一生徒が深い関係になるはずないよなぁ。もしかして、入学前から知り合いだった?」

 その言葉を無視し、アカツキの前を通り過ぎる。内心の動揺を見透かされないように、唇を結んで階段を下りようとしたら、

「禁断の恋ってやつ?」

 低い声に、つい足を止めた。

「……え?」

「アタシ、センセイとの秘密の関係なんだぁ。周囲にバレないようにするのが大変で。でもだからこそ燃えるっていうか」

 私の口真似をしているつもりなのか、女口調でそう言うと「て感じ?」と皮肉っぽく付け足す。