「知紗……?」
「先生は、すごいね」
「え……?」
先生にくっついてると気持ちがほどける。
夜、眠りに落ちる直前みたいに、不安とか心配とか、心をわずらわせていた感情が消し飛んで、無防備になる。
「なんかもう、今この状態で寝れる感じ」
「はは、なんだそれ」
くしゃっと私の髪を撫でて、先生はやさしく笑う。
「寝不足? あ、わかった。夜中に漫画読んでるな?」
「違うよー! 英語の予習とか数学の課題に時間かかるんだもん。多田先生の授業、宿題多すぎ」
唇を尖らせながら見上げると、先生は相変わらず困ったように眉を下げて、でも口元には笑みを浮かべていた。
先生のハの字に開いた眉にきゅんとする。優しい表情が、とても好き。
「うちのクラスの数学も、先生が担当だったらよかったのにな」
私の頭を撫でていた手がぴたりと止まる。
「知紗……、あのさ」
先生の目に、なんとなく寂しげな色が浮かんだときだった。
「おい、何してんだそこで」


