外灯の光が届かず、薄暗い。
エアコンの室外機や排気ダクトがむき出しで、そもそも人が通るような場所じゃないのかもしれない。
「知紗、どうした?」
この期に及んで、アカツキはまだ笑っている。
眉を下げて、困ったような顔で、嘘笑いをする。
一度深呼吸をして、私は右手を振り上げた。
ばちん! と音が響く。
アカツキが、あっけにとられたように目を見開いた。
右手がジンジン痺れて、痛い。
人を叩いたことなんてなかったから、はじめて知った。
叩くほうも、痛いんだ。
「なに、すんの」
左の頬に手を添えて、アカツキが言う。
薄っぺらい笑顔は消えたけど、まだダメだ。
もう一度右手を振り上げると、今度は頬を打つ前に手首を取られてしまった。


