声をかけると、彼は頬を引きつらせて見返った。
「はあ? あほなこと言ってんな」
「もう無自覚なのが罪だね、この男前!」
「うっせえよチーコ」
「あれれ、トワくんたら、顔が赤くない?」
「お前……助けてやったのに」
腕をぐいっと引っぱられ、私は壁に背中をぶつけた。
「いたっ、もう、暴力はんた――」
顔の横に、トワくんの右腕が伸びていた。
はっきりとした二重の目に、まっすぐ射抜かれる。
「!?」
廊下には通行人がいるけれど、ロッカーの陰で死角になっているうえに、トワくんの身体で隠れているせいで、ほとんどの生徒が素通りしていく。
彫りの深い顔に間近に覗きこまれ、頬がボッと燃えた。
アカツキよりも小柄なぶん、距離が近い。
トワくんの顔面をこんなに近くで見るのは初めてだ。


