「……知紗?」
顔を覗き込まれ、はっとする。
「ごめん、なんでもない」
あわててレミのとなりに戻った。
びっくりした。自分でも知らないうちに、泣きそうになっていた。
胸がずきずき震えてる。
頭に触れた大きな手から、アカツキの苦しみが伝わってきたような気がした。
原因不明の悲しみが、じわじわと胸に押し迫ってくるみたいだ。
説明できない現象を、不気味に思うのと同じかもしれない。
たとえば夜、ひとりでベッドに入ったとき、本棚から本がひとりでに落ちたとしたら、私は落ちた原因を突き止めるまで眠れない。
一冊だけ飛び出してて、今にも落ちそうになっていたとか、一昨日読んだばかりで、ちゃんと棚に戻せていなかったんだとか、納得できる理由を見つけないと、恐くてたまらないから。
アカツキの笑顔の理由を探さないと、私はきっと、眠れない。


