アカツキは知っていた。

 佐久田先生との恋愛が、私の勘違いにすぎないと、最初から気づいていた。

 先生と生徒の禁断の恋なんて最初から存在しないと知っていて、脅しにならない脅しをかけ、私に契約を持ちかけた。

 それは何のため?

 私をからかうため?


 ――そうじゃない。

 アカツキは、私を心配してくれていた。

 忠告をきかなかった私が結局フラれて泣いていても、馬鹿にしたりしなかった。

 気が済むまで泣かせてくれた。

 ただ黙ってそばにいてくれた。


 アカツキは――


「すごいことだね。自分をまるごと受け入れてくれる存在がいるなんて。家族でだってなかなか難しいのに」

 朱里さんは静かにフォークを置いた。両手で紅茶のカップを持ち上げ、嬉しそうに繰り返した。

「そっかぁ。知紗ちゃんは、あっくんの忠犬ちゃんなんだね」