「忠犬ってつまり、絶対的に信じられる存在ってことでしょ? 逆に言えば、飼い主を絶対的に信じてくれる存在、かな?」

 彼女の笑い顔に、一瞬、弟のよく似た顔が重なった。

 端正な顔を崩して、「知紗―」と私を呼ぶご主人様。

 アカツキはいつも、まっすぐに、私の目を見る。


「信頼しあってなかったら、とっくに破綻してるはずだよ、そんな関係」


 ぎゅっと胸が締まった。

 私とアカツキの、関係は――

 あの日、微笑み王子に弱みを握られて、脅されて、犬にされたと思っていた。

 でも、本当にそうだったのかな。

 頭の中で、記憶が巻き戻る。ぎゅるぎゅると音を立てて、映像がさかのぼっていく。