茶髪と黒髪がひとりずつ。それぞれ今をときめく若手俳優と同じ髪型をしているけど、完全に似合っていない。
「君、めっちゃ可愛いね。よかったら一緒に遊ばない?」
きょろきょろあたりを見回す私の肩を、茶髪が掴んだ。
「いや、君だよ君。かわいいね。高校生でしょ?」
「え、私?」
「うん、君。完全にひとめぼれしちゃったよ。ね、LINE教えて」
「――!?」
口をぱくぱくさせていると、黒髪のほうが「ちょっと」と茶髪の腕を引っ張った。背中を向け、声をひそめる。
「べつに、それほどでもなくね?」
「いやいや、この程度の子のほうが引っかかりやすいんだって。可愛いって言われ慣れてないから」
小声でしゃべってるつもりのようだ。丸聞こえですけど。
なんて失礼な奴らなんだ! とは思うけど、怒る気にはならなかった。だって私は自覚してる。
レミという美少女がとなりにいれば、嫌でも毎日、残酷な現実というものを突きつけられるのだ。


