「いいから」

 アカツキは頬の肉を持ち上げた。握られたところが、痛い。

「姉貴には、言わなくていいよ」

 無理やり作った笑みに、胸がぎしりと軋んだ。

 なに、その顔……。

「ちっ、しょうがねえな。タクシー呼んでやるから、帰れアカツキ」

 セイが強い口調で言うと、アカツキは笑った顔のまま眉を下げる。

「……ごめん」

「俺、一緒に乗ってくから」

「いいよダイチ。ひとりで帰れる」

「けど」

「私が送る!」

 とっさに手を上げると、視線が集中した。アカツキもびっくりしたように私を見ている。

 頬が熱くなっていくのを感じて、私はもごもごと口を開く。

「いや、ほら、ボーリングで競ったせいで無理させたんなら、私にも責任あるし……」

 一瞬、沈黙が漂ったあと、

「じゃあ、知紗ちゃんよろしく」

 ダイチくんが微笑んだ。