キミが泣くまで、そばにいる



「賭けにならないんじゃん?」

 ボソッと高槻くんが言って、百円玉をテーブルに置く。

「俺も真辺さん」

 びっくりした。高槻くんに名前を呼ばれるのは初めてだ。
 知っててくれたんだと、ちょっと感激してしまう。

「オイなんだてめーら! みんなしてちィに賭けやがって……」

 そこで一同の視線がひとりに注がれた。私のとなりで、美少女がきょとんと目をまたたく。

「え、私?」

「レミちゃんは、もちろん俺だよね?」

 疑いの余地はないという顔で親指を立てるセイに、レミは満面の笑みを返す。

「じゃ、ちーちゃんに五百円」

「んががが」

「やっぱ賭けになんねーかぁ」

 トワくんが千円を回収しようとしたところに、勢いよく五千円札が叩きつけられた。セイが怒りの形相で叫ぶ。

「俺だ! 俺が俺に賭ける!」

「なんだよ、そのセリフ」

 ダイチくんが吹き出し、トワくんも八重歯をのぞかせる。

「ぎゃはは! セイかっけー!」

 大笑いしていた彼は、イントロが流れ出すと「おっと」と立ち上がった。