キミが泣くまで、そばにいる



「知紗……」

「あ、はは」

 先生の苦しげな顔を見ながら、私は自分の首に手を当てた。

 熱い。

「や、やだなぁ先生。もっと早く言ってよぉ」

 頬の筋肉が勝手に持ち上がる。

 痙攣したみたいに、口角が震える。

 真っ赤な顔で、私は今きっと、気持ち悪い笑みを浮かべてる。

「知紗、ごめん」

「い、いいよ。全然、大丈夫。ちょっと言ってみただけだし、先生と付き合うの、憧れだったっていうか」

 言葉はするするとこぼれていった。

 コップに溜まった水の表面だけすくい上げるみたいに、心の残骸は底に沈めたまま。


「ほら、禁断の恋ってやつ? 一回、経験してみたかっただけだから」