キミが泣くまで、そばにいる


かっこいいけれど人形のように人工的で、全体的にどこか作り物めいて見える井端暁とは、何かが違う。
 
星野彗の顔は、かっこいいではなく、美しい、と形容するほうが合っているかもしれない。
そんな美しい顔を惜しげもなく歪めて、星野彗はため息をついた。

「アカツキさぁ、どうせ連れてくるならレミちゃんにしろよなぁ」

「え、レミのこと知ってるの?」
 
思いがけず出た友達の名前に食いつくと、星野彗は面倒そうに答える。

「あー顔だけ。俺、この学校の可愛い子は全員インプット済みだから。レミちゃんは3組で唯一の90点台だし」
 
そのレミといつも一緒に行動している私のことは、視界からシャットアウトしていたということですか。
 
なんてことだ。この美形、女子を顔で判断している……。

「いやいや、69点だってなかなかの高得点じゃん? ふくくっ」

「井端くん、笑いをこらえきれてないよ……」

ふと、微笑み王子の真ん丸の目が細まった。突然浮かんだいたずらな笑みに、心臓が脈打つ。

「『井端くん』じゃなくて、『ご主人さま』でしょ?」