「知紗が無事に合格して、この学校に入ってきて、話さなきゃっていつも思ってたんだけど」
あんまり嬉しそうな顔をしてるから、どうしても言い出せなかった。そう言って先生は声を震わせる。
「ごめん、知紗……」
先生はいつも、私が抱きつくと頭を撫でてくれた。
「知紗」って微笑みながら名前を呼んでくれた。
「頑張りすぎるなよ」といたわってくれた。
いつもいつも、先生は優しかった。
でも、先生は私を抱きしめなかったし、頭に触れる以上のことをしなかった。
高校に入ってから、学校以外で会うことがなかった。
ふたりが付き合っていると思っていたのは、私だけだった。
すとんと、すべてが腑に落ちて、こみ上げたのは怒りでも悲しみでもなかった。
恥ずかしい。
死ぬほど恥ずかしい。
顔から、火が吹き出そうだ。


