キミが泣くまで、そばにいる



 自動販売機のある中庭からほんの数メートル奥に行くと、木々が林のように茂った人目のつかない場所に出る。

 黙ったままそこまで歩くと、先生は静かに私を見た。

「ごめん。本当は、ずっと言わなきゃって、思ってたんだけど……」

 頭上の枝は静かで、晴れているのに太陽の光が届かない。

 先生に笑顔がないだけで、私の心は曇り、あたりの空気も張りつめる。

「実は、今年で教師、辞めるんだ」

 包丁で切りつけられたような衝撃だった。

 先生の言葉が私にぶつかって、ばらばらになって、細かな破片が体中に突き刺さる。

「ど……どうして?」

 悲しそうに目を伏せている先生を見て、まさかと思った。

「もしかして、私のせいで」

 アカツキみたいに、誰かが私たちの関係に気づいて、ほかの先生の耳に入った。
 その可能性を口にする前に、佐久田先生は首を振る。

「そうじゃない。知紗のことは、関係ないんだ」

「じゃあ、なんで辞めるの? 勉強に専念するってこと?」