キミが泣くまで、そばにいる



 微笑み王子の声と不意打ちの指先に、硬直する。

 肩までの長さを無理やりひとつにまとめた髪が、しゅるりと解かれた。

 アカツキの手が、私の髪をなぞって、心臓がばくばく跳ねる。 

「はい、できた」

 ほどいた髪ゴムを私に手渡しながら、彼は「下ろしてる方が似合う」と微笑む。

 間近で咲いた笑みに、呼吸が止まりそうだ。

「わーリボン型だ。ちーちゃん可愛い」

 レミが顔を輝かせ、私は我に返る。

「え、リボン型?」

 前髪の上でリボンを作るハチマキの結び方は、レミや可愛い女子たちにのみ許されるものだ。

 凡人の私がしたら“おもしろく”なってしまう。

「わわ、恥ずかし」

 ほどこうとしたら、手を掴まれた。

「こら知紗」

 アカツキはにこりと笑う。

「取らなくていいから」

「うんうん、ちーちゃん似合ってる」

 微笑み王子と美少女からキラキラの笑顔を向けられ、目がつぶれるかと思った。