キミが泣くまで、そばにいる


「ま、待って! なんで私が、井端くんの世話係に……」

「え? 理由言っていいの? 今、ここで?」
 
純粋に驚いたような顔をされて、あわてて両手を振る。

「いやややや、待って待って、ダメダメダメです」
 
にこーっと無邪気に微笑まれて、私は「はは……」と無理やり笑った。
 
人の笑顔が恐いなんて、はじめてだ。
 
井端暁のにこやかな表情から『言うことを聞かなければバラすぞ』という心の声が聞こえてくる。
 
ど……どうしよう。やっぱりこの人、昨日のことで私をおどすつもりだ……。

「ちィ、惜しいなー」
 
いきなり目の前に端正な顔が現れて、私は悲鳴を上げた。
金髪の彼にしげしげと顔を眺められ、思わず身体を引く。

「な、なに?」

「ちィ、もうちょっとで合格ラインだったのになぁ」
 
勝手に“ちィ”と呼びはじめた金髪美形は、びっくりするくらい他人との距離感がない。

こんな美形に間近で見つめられたら、ドキドキするどころか心がさわぐ。
 
だってどう見ても、女の私よりはるかに綺麗な顔をしているから。

「えっと……なんの合格ライン、でしょうか」