3ヶ月にも及ぶ病院でのリハビリ生活をへて、ナポレオンは“記憶喪失した御堂暁”として様々なことを知ったという。


この“ニッポン”と呼ばれる極東の国では、スプーンやフォークではなく、主に“箸”という二本の棒を使うこと。

パンではなく、米を主食として食べること。

義務教育の制度があること。


なぜ自分が知識もなく日本語を理解し、話すことが出来るのかは分からない。

箸の使い方だって保育園児並みであったし、なによりナポレオンとして生きていた時代の喋り方は、特に周りから受け入れられなかった。


今時の小学5年生は、自分を「我が輩」と言ったりはしないし、表面上、大人に傲慢な態度でものを言ったりはしない。


この日本という国の常識とモラルを病院生活で身につけつつ、御堂暁として生まれ変わったナポレオンは、苦労しながら大学生になったのだそうだ。


事故があった8年前、御堂暁は当時11歳だった。

つまり、御堂暁もといナポレオンは、今年であたしと同じ19歳になる。




……まあ、身体年齢でいえば、の、話なのだが。