それから十数分とたち。
「ふふふふん、ふふふ、ふふふーん」
スキップ歩調で鼻歌を歌いながら、ナポレオンはガサゴソとカラオケボックスの機会をいじる。
けっこういまどき流行りの歌のようである。
なんかナポレオンのほうが、あたしよりもずっとノリノリだ。
「ほい」
ナポレオンはウインクしながらペロッと舌を出し、幼稚園児みたいな顔つきで、あたしにマイクを渡す。
「普通の少女漫画じゃあ、恋に敗れた友人をスイーツの馬鹿食いに連れて行くところだが、生憎、我が輩にはお前を馬鹿食いに連れて行くほどの予算はない。
ということで、ここに連れてこさせてもらった。
遠慮するな。
1時間おもう存分、そのイケボで不平不満を声にしてぶちまけるがいい」
380円くらいなら負担にならん。
ナポレオンは「えっへん」と胸を張る。
別にあたし、イケボ(イケメンボイスの略)ではないと思うんだけど……。
でも、ストレス解消を狙って、そうしてくれてるんだよね。
そう思うと、だいぶん気が楽になった。
「……ん、ありがと。かなり元気でた」
「兵の士気を高めるのは、我が輩の得意分野だからな」


