隣の部屋のナポレオンー学生・春verー






「へっ?」



急な来訪者に、神山先輩も呆気にとられている。


「ちょっ、あんた……」

「いやあ、探したぞ緋奈子どの。
西門でたところで待っていると言ったのに」


ナポレオンの口調はわざとらしい。

嘘丸出しの声色だ。


「えっとぉ……君は?」


先輩のこの事態と状況に混乱したのか、しどろもどろになってナポレオンに問う。


すると、ナポレオンは先輩に差し向かって、ニヤッと笑う。



「緋奈子どのの隣人の、
御堂暁であります」



ナポレオンはドヤ顔で言うと、あたしの肩に手を置く。


って……なんか何気なく肩抱いてるんですが。



「はあ……隣人」


先輩は言いつつ、あたしの左肩に置かれた御堂暁の手を凝視してる。



「はい。
けっこう“親密”な隣人でありますよ」



ふ。


ナポレオンは勝ち誇ったように強調し、先輩に笑ってみせる。


いやいやいや!

なにがしたいのかわかんないけど、そんな言い方したら誤解されるよ!


そう目で訴えるあたしのことを無視し、ナポレオンは、


「では、僕は彼女に用がありますので」


と先輩に頭を下げる。


「行くぞ」


ナポレオンは好きなだけすると、すたこらとあたしの手を引いて、西門へと進んでいった。


あたしの手に指を絡めて。


……なにしてんのよ、ナポレオンは。

こんなの傍から見たら、完全に“そういう間柄”みたいじゃない。


なす術なくポカンとした先輩を置いて、あたしはナポレオンに連れられるまま校舎を出て行った。