気遣ってたんじゃなくて、単に放置してただけのようだ。
好きになってもらえなかった方が悪い。
遊び相手として見られる方が悪い。
ナポレオンはそう言わしめてるようだった。
……さすがは。
“英雄色を好む”とは、この事ね。
あんたからしてみれば、女遊びなんて大したことじゃないんでしょうよ!
「は……まあ、そうですね」
あたしは死んだ魚も顔負けの目になって、ナポレオンに返す。
「うむ、そういうことさ。
恨むなら我が輩ではなく、自分を恨むのだな」
そう冷たくあしらうと、ナポレオンはすたこらさっさと家路を急いで行った。
そんなナポレオンの背中に、あたしはベーっと舌を出す。
なによ、イケメンに生まれ変わったからって。
この、元チビ!
元肥満!
元ハゲ!
元中年男!
とっちゃん坊や!
ありとあらゆる罵詈雑言を込めて、あたしはナポレオンに向けて、親指を下に突き出す。


