そう考えながらご飯を噛む。

するとその時。


「……え……」


ナポレオンがなにやら神妙な顔つきになって、あたしのところに身を乗り出してきた。


切れ長の目は、真剣な表情になると、刃のように研ぎ澄まされる。


あたしは呆然とした。


「な、なに……?」


狼狽しながら、あたしは訊いた。

近くでみると綺麗な顔だな……なんて、思いながら。


「きたぞ」


ナポレオンはニヤリとし、あたしにも分かるように後ろを見た。


すぐ後ろの4人用のテーブルに、男が3人、女が1人いる。

たぶん、全員先輩だ。


「ねえ、どうだった?新入生の子。
なんかいい男いた?」

「法学部んとこは、あんまだな。
文学部はまだ見てねぇけど」

「あ、でも文学部んとこは何人かいたぜ。
顔のいいやつ」

「そういや、ちらほらいたな。
ショートカットのやつとか、センター分けのやつもいた」


彼らは女の先輩と問いに矢継ぎ早に答える。

あれ?

あの女の先輩の隣にいるのって……


神山先輩だ。


あたしの目の前にいるナポレオンは、してやったり、とばかりのドヤ顔。

勝ち誇ってウインクまでしてる。


「奴らの話をよく訊いておけ。
上手くすれば、あの男の好みや性格の情報を手にする機会になるのだぞ」


ナポレオンは小声で囁く。

すごい……さすがは策士だ。