「……だめ。
ちょっと、本気で食欲なくなってきた」

「大丈夫か?」

「心配するなら下ネタ連発しないでよ……」


本格的に気分が悪くなってきて、あたしは目を覆う。

なにしろ、あたしは昔っからエロいのがダメで……。

いや、男が男相手にブチ込んだりするのは、別だよ。

あれはむしろ好きだった。

でも男女のエロいところは、大嫌い。

だって想像して見てよ。

可愛い系男女のケツとはまた違う、別の穴に、あれをブチ込むんだよ?

気持ち悪いわ、想像しただけで……。

(※お見苦しい発言、失礼いたしました)

まだ純情で、少女漫画みたいな恋に憧れてた中学時代のあたし。

古本屋で少女漫画の横に売られている妖艶な絵柄の漫画に、当時のあたしは興味本位でそのページを開いてしまった。

タイトルは、


『ベットの中の野獣なカレ』


……だ。

いま思えば、いかにも18禁のオーラが漂う題名だが、そんな事など、過去のあたしが知るはずもない。


ーーそしてあたしは、いけないオトナの世界を覗いてしまったのだ。


たぶん、エロいのが嫌いになったのは、その時のショックがトラウマなんだと思う。

それ以来、ケータイ小説でも過激な性表現のあるやつは読めない。


「緋奈子よ、そんなに気分を悪くするな」


なんにも知らないナポレオンは、まるで異常事態が怒ったかのように目を丸めている。