私の眼の前に座る彼は、南雲絢星(なぐも あやせ)くん。
2年生になって初めて同じクラスになって、隣の席で。
だけど全然話したこともなくて、どんな人かもちゃんと知らない。
知っているのは、噂で聞いたことばかりだ。
180センチ近くの長身、細身の身体、ワックスで柔らかくセットされた黒髪。
あまり着崩したりせずに、綺麗に着られた、ネクタイと紺色カーディガンの制服。
部活は天文部。
星とか、そういうミステリアスな感じが似合うなぁ、なんて。
そして何より女の子の目を奪うのは、黒縁の眼鏡越しの綺麗な瞳だった。
そんな南雲くんはモテるけど、女嫌いっていう噂がある。
1人で居るのが好きなのか、自分の席で本を読んでいることが多い気がする。
それでも男の子の友達は多くて、皆で喋っている時は他では見せないような笑顔があって。
見ている女の子たちはそれにさらに惹かれる…らしい。
対して私、北山夕陽(きたやま ゆうひ)は引っ込み思案で、人見知りで。
そんな彼と私が、いくら隣の席だからって話すこともなく。
だけど、それは突然起こるもので。



