「…」


「…」






沈黙。


ふたりきりの保健室には、私がペンを走らせる音と、時計の秒針の音だけが響く。


…だけど、今は気まずくない。






「絢星くん、何か喋って」


「…」




いつかの絢星くんと同じ無茶振りを、いたずら半分にしてみたのに。

読んでいた本から少し顔を上げたものの、何も言わずに私を見る絢星くん。





「…いつもと髪型、違うね」




やっと口を開いた絢星くんに、驚く。


たしかに今日はいつもおろしている髪をハーフアップにしてみた。


正式に絢星くんの彼女になってから、やっぱり少しでも可愛くなりたくて。


だけど絢星くんが気付いてくれてるなんて、思わなかった。

放課後まで何も言われなかったし、絢星くんがそんなことに気付くタイプには思えないし。



予想外の嬉しさに戸惑っていると、





「…可愛いんじゃない」




少し目をそらして小さな声で続けるから、胸がぎゅうっと温かくなった。