初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。





次々と登校してくるクラスメイトの中で、南雲くんの友達が南雲くんに話しかける。







「なあ、北山さんのこと好きだったの?」







髪を結ぼうとしていた私は、ぴたりと手を止める。





…聞こえて、るんですけど。

思いっきり私、隣にいるんだけどな。



そういう話って普通、本人のいるところでする…?







極力、聞こえないふりをしながらまた髪を結ぶのをやめて手櫛でとかした。





ふわりと肩にかかる、少し猫っ毛の髪。





…何て、答えるんだろう。







「…さあね」






そのひと言は、想像よりも鋭く私の心に刺さった。



…否定、したわけじゃない。


だけど肯定したわけでもない。





曖昧なその言葉は、なんだか少し寂しくて。




何だろうな、何で傷付いてるんだろう。






南雲くんが私のこと好きじゃないのは、きっと私も気付いてるはずなのに。