そんな話をしながら教室に入ると、私の隣の席には既に南雲くんの姿。
ドクン、と跳ねた心臓。
無意識にパパッと前髪をいじって、自分の席に向かう。
おはよう、おはよう、おはよう。
頭の中で何度も唱えて、でもいざ南雲くんを見ると口に出せない。
彼氏なんだから、おはようくらい言うよね。
だけど、でも、きっと…
南雲くんが私を選んだのは気まぐれとか、偶然とか、私が断れなそうだからとか。
周りにいろいろ詮索されるのが面倒だからとか、そんな理由で。
そんな私が挨拶していいのかなって、また躊躇って。
それでも意を決して口を開いた。
「お、はよう…」
ヘッドホンをしている南雲くんに気づいて、あ、聞こえてないかもしれない、と徐々に小さくなる語尾。
と。
「あ…はよ」
私の声が聞こえたのか否かはわからないけど、私が横に立っていることには気づいてヘッドホンを外し、こちらを見た。
それが何だか嬉しくて、安心して、
「おはよう」
って、今度はちゃんと言えた。



