ラベンダーと星空の約束

 


この季節に間に合わなかった流星に見せて、

「来年は一緒に見ようね」
って…そう言うんだ。



立て続けにシャッターを切った。



私が今感じている全てを、彼に伝えたいと思った。



けれど、切り取られた小さな四角い空間の中に、全てを表現するのは難しい。



ラベンダーの香りを含んだ夜風の匂いも、虫の音も、

木々のざわめきも、無限の星空の広がりも…

全てを流星に伝えたいのに……



私の写真の技術力では、一枚に全てを盛り込む事は出来そうにない。



溜息をついて、カメラのレンズを星空だけに向けた。



南の空高くに赤く輝くアンタレス、流星の星…

その星をフレームの真ん中に据え、カシャリ、シャッターを切る。



そのままフレーム越しに空を仰ぎ、じっと眺めていると、ふいに星が一つ流れた。




『流星群が見える…』
日中大樹が言っていた言葉を思い出す。



流星群…?まさか……



そう思ったが、その後も毎分1〜2個の割合で、南の空に小さな星が流れ続けた。



星を追い、夢中でシャッターを切った。



写した画像を途中で確認している余裕はない。

星の軌跡が上手く写っている事を祈りながら、星が流れる度にシャッターを切り続けた。




どのくらいそうしていただろうか。

時間にすると30分位か。



カメラを構え天を仰ぎ、流れ星を待っていたが、

星の流れる間隔が徐々に開き、やがて数分待っても流れなくなる。



夢中になっている間は良かったが、流れなくなった星をただ待つと言うのは、カメラを持つ腕の疲れを強く感じる物だ。



もうおしまいにしようと思ったその時、アンタレスを横切って、南の空から一際明るい星が流れた。



一瞬、アンタレスが落ちてきたのではないかと、そんな有り得ない事を思ってしまう。



まさに撮影を終えようとしていた所なので、右手をシャッターボタンから外しており、最後の流れ星を撮り損ねてしまった。



今のが一番綺麗だったのに……



残念に思う。

ファインダーを覗いたまま、未練がましく、流れ去った星の軌跡を追う。