肩下までの黒髪をなびかせ、ラベンダー畑へ歩いて行く。
今年最後の夜のラベンダー畑は、地面に這わせた青い照明に照らされ、暗闇の中にぼんやりと浮かび上がっていた。
近づくにつれ、爽やかで優しい香りが濃くなっていく。
青紫色の花穂がサワサワ風に揺れ、まるで波の様だ。
暗闇の中に幻想的に浮かび上がるラベンダーの海。
その上空には、幾万の星達が思い思いに瞬いて、地上に淡い星明かりを降らせている。
砂利道を抜け、草地を歩き、ラベンダー畑へと近付いて行った。
視界に入ってきたのは白樺並木。
そこは、幼い頃の流星と私の、待ち合わせの定位置だった。
前方に広がるラベンダー畑のライトが、白樺の白い木肌も、青紫色に染めていた。
カメラを構え、ラベンダーの丘を背景に、白樺並木を写す。
何年も変わらないこの景色。
強いて変化したポイントを上げるなら、成長した白樺の幹が若干太くなり、背が伸びたと言う位か。
それも日常的にこの木々を見ている私にとっては、変化した物と感じ難い。
流星と並んで星空を眺めた幼いあの夏と、寸分違わぬ様に見えるこの景色……
カメラを構えたまま、暫くファインダー越しにその景色を見ていた。
記憶の中から、幼い日の私と流星の姿が蘇る。
四角く切り取られた絵葉書の様なその空間に、幼い初恋の想い出をそっと重ね合わせていた。
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―――――……
星を見るため、白樺並木で待ち合わせる子供の頃の私達。
時間通りに家を出ても、いつも先に流星が来ていて、
その白い木肌に背をもたれ、座りながら私を待っていた。
ラベンダー畑からの淡いライトに照らされる彼は、
陽光の下では茶色に見える髪も瞳も、夜は青みを帯びて神秘的に見える。
良く日焼けした私の肌と違い、小さな少年の頃の彼は、色白で華奢な印象を受けた。
流星はひ弱に見えると気にしていたけど、私は美しいと感じていた。


