オーダーが溜まっている中で、母一人調理場に残すのは心配だけど…
いや、うちの母なら大丈夫か。
調理場から出る前にチラリ振り返ると、
母はポテトフライを揚げながらサラダを作り、
焼きそば炒めて、サンドイッチのパンにベーコンを挟んでいた…
凄いね母、手が6本くらいある様に見えるよ。
調理場の阿修羅と名付けたい。
母を見ていると、私はまだまだだと思ったりする。
もっと頑張らねば。
さてレジのトラブルだけど、幸いな事に一瞬で解決した。
それですぐに調理場に戻って来れたけど、その時には既に大樹の姿は消えていた。
会話するのを諦めて、畑に戻って行ったらしい。
結局何の用事なのか聞けず仕舞いだが…
「まぁいいか」とそれもすぐに忘れた。
昼時の軽食コーナーは戦場だ。
今は忙し過ぎて、大樹に構っている余裕はない。
今年最後の賑わいを見せた店内は、16時を過ぎて漸(ヨウヤ)く落ち着きを取り戻した。
アルバイトの人達を順番に休憩に入れ、私が土産物コーナーのレジに入る。
すると入口の自動ドアから、また大樹が顔を見せた。
「よお、やっと落ち着いたか?」
「うん、何?」
「おう…あのよ…」
「うん」
「…あのよ…」
「“あのよ”はもういいから、続きを言ってよ」
「おう…」
「あのよ」と「おう」ばかりで、全然話しが進まない。
いつもと違い、歯切れの悪い大樹に首を傾げた。
「何の用よ。今日の大樹変だよ?
いつも変だけど更に変」
「ったく、てめぇは…マジで可愛くねぇ」
「で?何?」
「あのよ………いや…やっぱ何でもねぇ。
これ買ってくから」
そう言って大樹がレジカウンターに置いたのは、
レジ横の籠に入れ陳列していた、ご当地キャラメル、ジンギスカン味。
思わず「は?」と聞き返してしまう。
大樹がうちでオヤツを買う事は、まず無い。
勝手にドリンクを出し、飲み終えてから
「コーラ貰ったぞ」と後申告してくる奴だ。
そんな大樹が「買う」と言い、
しかもシャレで作ったとしか思えない、ジンギスカン味のご当地キャラメルを……


