店の入口に着いた。
午前中から既に陽射しが熱い。
ファーム月岡の店舗が陽の光に包まれ、開店を待っている。
母がエプロンのポケットから店のカギを取り出す。
ドアが開くのを待つ数秒間、空を見上げていた。
気持ち良く晴れ渡り、眩しい光が降り注ぐ、まさに観光日和。
濃く澄んだ水色の空に、真っ白な綿雲の固まりがポコポコ浮かんでいて、
真夏の強い陽射しを浴びる草木の緑と、ラベンダーの紫色のコントラストが美しい。
写真を撮りたくなる様な“これぞ富良野”と言うべき雄大な景色が広がる。
店のドアが開き、母に続いて中に入った。
さあ、今日も頑張ろう。忙しい一日の始まりだ。
◇
観光客がどっと押し寄せる慌ただしい昼時、
調理場の主役は母だが、余りの忙しさに、私も調理に加わった。
調理場に繋がる裏口から、大樹がひょっこり顔を出した。
母と並んで火の前に立つ私は、焼きそばを炒める手を止めず、大樹と会話する。
「何?」
「俺、今昼休憩…」
「悪いけど、今大樹の分のご飯作ってあげる余裕ないから。
三浦くーん!
B卓D卓、焼きそば、ベジタブルカレー、ポテトフライ上がりー!」
出来上がった料理をカウンターにドンドンと乗せると、すぐに次のオーダーに取り掛かる。
A卓、スパイシーチキンサンド×1、オムカレー×2、それとじゃがバター……
「昼飯ねだりに来たんじゃねーよ」
「じゃあ何の用?」
「あのよ…」
「うん、何?
あっ!これ絶対オーダー間違えてる。
“じゃがバター×7”っておかしい」


